オール・ブラック - β - 正体//Identity (前編)

振り仮名の可視を捻れる

オール・ブラック

- β -

アイデンティティー

2010年(ねん)06月(がつ)22日(にち)

モンバサの岬(みさき)

10時(じ)42分(ふん)

いま僕(ぼく)は船酔(ふなよ)いを感(かん)じているはず、でもない。一人(ひとり)で過(す)ごした、この寝台(しんだい)にずっと動(うご)かぬまま。でもの思(おも)いに深(ふか)く泳(およ)いでるから、あんまり時間(じかん)の流(なが)れは知(し)らなかった。

この船(ふね)のたった一(ひと)つの時計(とけい)はこの保健室(ほけんしつ)にはなく、船橋(ふなばし)に有(あ)った。それだから今(いま)は何時(いつ)か分(わ)からない。僕(ぼく)の時導(ときしるべ)はただ甲鈑(こうばん)から長(なが)く映(うつ)す朝日(あさひ)の影(かげ)だった。その影(かげ)が消(き)えたから、もうどれくらい時(とき)が過(す)ぎたが分(わ)からなくなった。

「見(み)たい時(とき)は夢(ゆめ)が出(で)ない。」

はなんかをフザケてるみたい、その鮮烈(せんれつ)な単色(たんしょく)の思(おも)い出見(でみ)せるを断(ことわ)った。むしろに暴(あば)れ込(こ)め見(み)たら、頭(あたま)に劇痛感(げきつうかん)じた。

もしたら、思考(しこう)から出(だ)してるは銃声(じゅうせい)、爆音(ばくおん)、そして叫(さけ)びだった。声(こえ)だけでも、聞(き)きなかった良(よ)かった。そのが酷(ひど)く聞(き)こえてるではなく、だがその声(こえ)は自分(じぶん)が「何(なに)かをしたか」っと思(おも)いさせた。

はあんまり寝(ね)てなかった。もししても直ぐ起(お)きた。不安(ふあん)が自分(じぶん)を休(やす)みから阻(はば)まれた、それでも眠(ねむ)りから阻(はば)まれた。もう朝(あさ)が来(き)ても僕(ぼく)は眠(ねむ)くない。

そのがなんか視聴覚(しちょうかく)を高(たか)めるそう。耳(みみ)が上甲鈑(じょうこうばん)から足音(あしおと)が聞(き)こえる。上甲鈑(じょうこうばん)には僕(ぼく)以外(いがい)誰(だれ)でもいないはず。最後(さいご)の聞(き)こえた声(こえ)は誰(だれ)かの足音(あしおと)が上甲鈑(じょうこうばん)に上(あ)がる声(こえ)だった。

その足音(あしおと)はドンドン聞(き)こえてる。でもその声(こえ)はそんなに大(おお)きではなくて、廊下(ろうか)も長(なが)くないから、足音(あしおと)は響(ひび)かない。そのはただ僕(ぼく)の耳(みみ)だけに大(おお)きく聞(き)こえてる。そのは乗員(じょういん)寝室(しんしつ)を越(こ)えた、彼(かれ)が機関室(きかんしつ)へ行(い)きなければなら、彼(かれ)は僕(ぼく)の所(ところ)に行(い)く。

「セオドア?」

がるが分(わ)かっても、僕(ぼく)は自分(じぶん)の思(おも)いに集中(しゅうちゅう)すぎるから、ヨルダンの突然(とつぜん)な乱入(らんにゅう)は僕(ぼく)を驚(おどろ)かせた。昨夜(さくや)のことがあったら、僕(ぼく)は保健室(ほけんしつ)に一人(ひとり)にして、記憶(きおく)を取り戻(もど)す見(み)て、そして自分(じぶん)が悪(わる)い人(ひと)じゃないかと説(と)き伏(ふ)せてする。

それに、僕(ぼく)は上陸(じょうりく)の後(あと)の時(とき)を覚悟(かくご)している。変(へん)かと思(おも)った、僕(ぼく)は怖(こわ)くない。僕(ぼく)は掌理(しょうり)を向(む)かっているかもしれない。でもそうしても、僕(ぼく)に何(なに)があったを知(し)らせてる。自由(じゆう)より答(こた)えを選(えら)んで訳(わけ)ないけど、ただ他(た)の方法(ほうほう)は考(かんが)えない。

「ヨルダンか?」

「もう直(す)ぐ上陸(じょうりく)の時(とき)だよ。」

ノロノロに僕(ぼく)は徹夜(てつや)で凝(こ)らしたこの寝台(しんだい)から立(た)ち上(あ)がった。彼(かれ)が僕(ぼく)を準備(じゅんび)するって言(い)った。

そのことは放(ほう)っておく。でも「象(ぞう)を無視(むし)する」って言(い)われたような、それは出来(でき)ない。手(て)を上(あ)げて、を伸(の)べたら、体(からだ)が自分(じぶん)を裏切(うらぎ)ってました、思考(しこう)だけが不眠(ふみん)された。

そのせい、がじ件(けん)に拘(かか)わって、でもそれを不在(ふざい)ほど、その不安(ふあん)がまたその件(けん)に戻(もど)ってしまう。そしてその、無視(むし)するのももっと難(むずか)しくなる。

「今(いま)行(い)く。」

立(た)ち上(あ)がると医務室(いむしつ)を見(み)詰(つ)めているヨルダンの所(ところ)に行(い)く前(まえ)、僕(ぼく)は怠(なま)けにそう言(い)った。彼(かれ)はこの部屋(へや)の戸口(とぐち)に立(た)つ。この状況(じょうきょう)はなんか、処刑(しょけい)に見送(みおく)り刑吏(けいり)みたい。「皮肉(ひにく)な」っと思(おも)った。

「なんで僕(ぼく)に言(い)った?」

普通(ふつう)のしゃべり方(かた)ででも少(すこ)し大声(おおごえ)で僕(ぼく)はそう言(い)った。

それは昨晩(さくばん)のこと、ヨルダンはその午後(ごご)のことを考(かんが)えているの僕(ぼく)を近(ちか)づいたの時(とき)。誰(だれ)もその午後(ごご)のことをよく分(わ)からないが、でもティムが話(はな)した怪談話(かいだんばなし)以上(いじょう)に、僕(ぼく)はなんとなくその雨(あめ)を止(と)まったのは自分(じぶん)の仕業(しわざ)だと信(しん)じた。

その時(とき)ヨルダンは言(い)った、乗員(じょういん)皆(みな)は嘘(うそ)ついたってのこと。彼(かれ)らはモンバサに上(あ)げたら救助隊(きゅうじょたい)が僕(ぼく)を待(ま)っているって言(い)ったが、でも本当(ほんとう)は僕(ぼく)を召し捕(と)るに行(い)くってまっている。

「だから、皆(みな)はキミのことを犯罪者(はんざいしゃ)だと思(おも)った。」

僕(ぼく)はため息(いき)を吐(は)いた、それはないだと証明(しょうめい)できないし。

「その情報(じょうほう)疑(うたが)わなかった、公告(こうこく)だから。」

ヨルダンは言(い)い続(つづ)いた。

「分(わ)かった、それは仕方(しかた)ない。僕(ぼく)もそうはないの証(しょう)が持(も)ってないから。」

我々(われわれ)のことを悪(わる)いかと思(おも)わたくない、だから言(い)った。本当(ほんとう)はキミのことを信(しん)じる、私(わたし)はキミが無実(むじつ)だと分(わ)かる。」

「・・・」

僕(ぼく)は絶句(ぜっく)した。自分(じぶん)以外(いがい)信用(しんよう)出(で)来(き)ない、この何(なに)も知(し)らない自分(じぶん)を。

「なんでそう言(い)ってるのよ?」

「正直(しょうじき)、わからん。」

彼(かれ)の答(こた)えを聞(き)くガッカリした、でもホットした。

「ただの直感(ちょっかん)かも、でも強(つよ)すぎて虫(むし)切(き)れない。」

「そうか。」

何(なに)も知(し)らないなのに、大勢(たいせい)が僕(ぼく)は無実(むじつ)じゃないだと言(い)ったのに、彼(かれ)は僕(ぼく)を信(しん)じる。気(き)に入(い)った。残念(ざんねん)、僕(ぼく)らはたった一日(ついたち)だけ過(す)ごした。なんかもっと長(なが)く知(し)ると、仲良(なかよ)しになるかもしれない。

その後(あと)彼(かれ)は僕(ぼく)に飲(の)み物(もの)を勧(すす)めたが、でも僕(ぼく)は独(ひと)りに選(えら)んだ。もし昨晩(さくばん)はどう感(かん)じたかと今(いま)はどう感(かん)じているかと分(わ)かっていたら、それを受(う)け入(い)ればよかった。

「これは言(い)い足(た)りないかもしれない・・・」

ヨルダンは僕(ぼく)を見(み)えずにつぶやいた。

「だがゴメン。」

聞(き)こえないふりしたが、でもヨルダンは僕(ぼく)が聞(き)こえただと分(わ)かった、でも彼(かれ)も知(し)らないふりした。それだから僕(ぼく)は返事(へんじ)したくなった、でも遅(おそ)かった、やってみても気不味(きまず)いし。

その医務室(いむしつ)でどれだけ時間(じかん)が過(す)ぎたのが分(わ)からないが、でも空(そら)はどんなに眩(まぶ)しいかと忘(わす)れるほど長(なが)かった。晴(は)れる空(そら)とウミネコの鳴(な)き声(ごえ)が僕(ぼく)とヨルダンが下甲鈑(したこうばん)から出(で)ていたら挨拶(あいさつ)した。

目(め)がその眩(まぶ)しさに慣(な)れているほど、僕(ぼく)は近(ちか)づいている遠(とお)いの陸(りく)が見(み)える。

「いつからの初(はじ)めての陸(りく)だ。」

これは昨日(きのう)生(う)まれたばっかりのたった一(ひと)つのいいところかもしれない、僕(ぼく)はくだらない普通(ふつう)のものを本当(ほんとう)に評価(ひょうか)出(で)来(き)る。

「本土(ほんど)だ!」

ティムは舳先(へさき)の砕波(さいは)の声(こえ)を対(たい)して悲鳴(ひめい)を上(あ)げた。彼(かれ)の声(こえ)は以外(いがい)に海(うみ)の音(おと)と対(たい)するほど大(おお)きかった。

「だれかアイツが王(おう)ごっこ始(はじ)まった前(まえ)に押(お)さえてくれ!」

ダサンは甲鈑(こうばん)からティムを揶(からか)った、同(おな)じくらい声大(こえおお)きかった。それを聞(き)くと、甲鈑(こうばん)に有(あ)ったモリーやペピーやアルヴィが笑(わら)った。

その後(ご)三十(さんじゅう)分(ぷん)くらい、漁船(ぎょせん)はモンバサ港(こう)に入渠(にゅうきょ)した。入居(にゅうきょ)する前(まえ)から救急車(きゅうきゅうしゃ)が待(ま)っている。入渠(にゅうきょ)してもヨルダン以外(いがい)乗員(じょういん)全員(ぜんいん)は忙(いそが)しいふりをして。ダサンとモリーとペピーは魚(さかな)の貨物(かもつ)を積(つ)み下(お)ろしふりして、ティムとアルヴィは機関室(きかんしつ)に隠(かく)れている。

船(ふね)から降(お)りる前(まえ)に、僕(ぼく)はもう一度(いちど)医務室(いむしつ)に戻(もど)った。振(ふ)り返(かえ)るつもりじゃなくて、この部屋(へや)で二日(ふつか)は何(なに)思(おも)い出(で)も作(つく)らない。いや、あの嵐(あらし)は忘(わす)れない。でもそれはこの部屋(へや)に有(あ)ってないし。この医務室(いむしつ)に来(き)たのはただ持(も)ちもの取戻(とりもどし)ってだけだった、この「セオドア・クエンティン」コートを。

甲鈑(こうばん)に残(のこ)ってるのはヨルダン一人(ひとり)、皆(みな)はヨルダンに別(わか)れ係(がかり)されたそう。でも彼(かれ)も何(なに)を言(い)うかと分(わ)かってないそう。

「じゃ、別(わか)れよね。」

僕(ぼく)は無邪気(むじゃき)に言(い)った。

「皆(みな)のことを許(ゆる)してよ、悪(わる)いつもりないから。」

「分(わ)かった。お礼(れい)を伝(つた)えてくれ、あなた達(たち)がいなければ僕(ぼく)はもうないかもしれない。」

案外(あんがい)、彼(かれ)は手(て)を上(あ)がった、握手(あくしゅ)を供(そな)えた。ちょっと驚(おどろ)いたから気不味(きまず)く受(う)けた。そう言(い)えば、皆(みんな)紹介(しょうかい)の時(とき)ヨルダンだけが握手(あくしゅ)してなかった。遅(おそ)いでも良(よ)かった。

「ほら、まっているぞ。」

まだ握手(あくしゅ)しているままで僕(ぼく)の方(ほう)に叩(たた)いたそして岸頭(がんとう)に立(た)っている緑(みどり)制服(せいふく)着(き)る二人(ふたり)の男(おとこ)を指(さ)す。

その男(おとこ)たちを見(み)ると、僕(ぼく)はヨルダンの手(て)を放(はな)してそしてコートを着(き)る。何(なに)も言(い)わずに僕(ぼく)は甲鈑(こうばん)から港(みなと)へ降(お)りた。その時(とき)「さようなら」言(い)ってなかったと思(おも)い出(だ)した、でも振(ふ)り向(む)いたらヨルダンはもう上甲鈑(じょうこうばん)に入(はい)った見(み)ると遠慮(えんりょ)した。

僕(ぼく)はまた振(ふ)り向(む)いてそして二人(ふたり)の緑(みどり)シャーツ着(き)る男(おとこ)のところへ早足(はやあし)する。僕(ぼく)は町(まち)への卵形(らんけい)敷石(しきいし)道(みち)に歩(ある)いてながら、その男(おとこ)たちは僕(ぼく)を気(き)づいた。彼(かれ)らの所(ところ)に着(つ)く前(まえ)に彼(かれ)らは僕(ぼく)に近(ちか)づいて。この人達(ひとたち)は僕(ぼく)を退治(たいじ)る来(き)たから、気(き)をつけないと。

「セオドア・クエンティン少佐(しょうさ)ですか?」

眼鏡(がんきょう)の男(おとこ)が籠(こ)もった声(こえ)で聞(き)いた。

「そうです。」

僕(ぼく)は思(おも)わず頷(うなず)いて答(こた)えた。

「私(わたし)らはアンタの救助隊(きゅうじょたい)です。」

嘘(うそ)だ。

最初(さいしょ)から嘘(うそ)ついたなんて、気(き)を付(つ)いて理由(りゆう)が増(ふ)えたな。

「私(わたし)はオディ、こっちはリック。」

笑(え)み振(ぶ)りするのもトッテモ辛(つら)かった、でもこの人達(ひとたち)は自分(じぶん)の正体(しょうたい)の手(て)がかりだから、キャラしないと。

「車(くるま)はあそこで駐車(ちゅうしゃ)している、今(いま)アンタを送ります。」

「あ—あぁ。」

僕(ぼく)が慌(あわ)ててるのは彼(かれ)らが何(なに)をするかを考(かんが)えてるから。幸(さいわ)い、彼(かれ)らは本当(ほんとう)に僕(ぼく)をアインホーンの所(しょ)に送(おく)って行(い)く。最悪(さいあく)は僕(ぼく)をここで殺(ころ)す。僕(ぼく)は本当(ほんとう)に飛行機(ひこうき)を墜落(ついらく)したならそうするだろう。最後(さいご)の手段(しゅだん)心配(しんぱい)なぁ、でも彼(かれ)らは僕(ぼく)の上(うわ)の空(そら)を甘えてるみたい。

路地(ろじ)を出(で)たら、赤白(あかしろ)の救急車(きゅうきゅうしゃ)が駐車(ちゅうしゃ)した。オディとリックが僕(ぼく)をそこへ連(つ)れている、やはり逮捕(たいほ)するのか?

「報告(ほうこく)から少佐(しょうさ)は記憶喪失(きおくそうしつ)を煩(わずら)わしいですね?」

救急車(きゅうきゅうしゃ)に歩(ある)いてながらオディが話(はな)し始(はじ)まった。何(なに)かを言(い)ってよかった。沈黙(ちんもく)で二人(ふたり)の知(し)らない人(ひと)と歩(ある)いてって本当(ほんとう)落(お)ち着(つ)かない。

「そう、せの漁船(ぎょせん)が救(すく)ってくれたの以上(いじょう)は覚(おぼ)えてないです。何(なに)があったのか教(おし)えてくれないかな?」

「正直(まさなお)私(わたし)たちも分(わ)からないです、私(わたし)たちはただアンタを向(む)かいに来ただけから。」

そうかと思(おも)った。彼(かれ)らはただの下(した)っ端(ぱ)だから。

「その報告(ほうこく)からは、アンタは飛行機(ひこうき)事故(じこ)に掛(か)かった。」

リックが言(い)った。

「それは知(し)っている、昨日(きのう)漁船(ぎょせん)の乗員(じょういん)から聞(き)いた。」

「ごめんなさい、それ以上(いじょう)はわからない。」

オディが言(い)った、そうながら、僕(ぼく)たちはもう救急車(きゅうきゅうしゃ)の所(ところ)に着(つ)いた。

「それでも安心(あんしん)してください。これからアンタを知(し)っている人(ひと)に送(おく)ってくる。」

「本当(ほんとう)?」

リックと話(はな)している所(ところ)に、僕(ぼく)はオディが救急車(きゅうきゅうしゃ)の背戸(せど)開(あ)けたを見(み)えなかった。失敗(しっぱい)した。その背戸(せど)が開(あ)けた途端(とたん)、三人目(さんにんめ)が現(あらわ)れて、僕(ぼく)の頭(あたま)に袋(ふくろ)を付(つ)けた。

「何(なに)する——」

僕(ぼく)は暴(あば)れたから、彼(かれ)らはもっと力(ちから)を入(い)れて。僕(ぼく)がまだ何(なに)があっているか分(わ)からない、彼(かれ)ら一人(ひとり)は手(て)で僕(ぼく)の口(くち)と鼻(はな)を殺(ころ)す。それで級(きゅう)にこの刳(えぐ)い匂(にお)いが鼻(はな)を刺(さ)す。

「クロロホルム!」

「———君(くん)。」

その匂(にお)いが思考(しこう)を操(あやつ)った、身体(からだ)は急(きゅう)に疲(つか)れてく感(かん)じた。その手(て)が僕(ぼく)の顔(かお)から放(はな)った時(とき)、頭(あたま)はもう重(おも)すぎる。砂俵(すなだわら)みたいに落(お)ちる前(まえ)に、僕(ぼく)は聞(き)こえた、誰(だれ)かが声出(こえだ)さずに僕(ぼく)の名前(なまえ)を読(よ)んだ声(こえ)。

物事(ものごと)の明(あか)るい面(めん)を見(み)れば、これは昨日(きのう)から初(はじ)めての眠(ねむ)りだ。

「———君(くん)。」

またその声(こえ)だ。名前(なまえ)が聞(き)こえなかったのに、なんで僕(ぼく)は読(よ)んでいた感(かん)をするだろう?その声(こえ)は柔(やわ)らかい、毒盛(どくも)った僕(ぼく)を癒(いや)する。

「———君(くん)!」

「ウルサイ・・・」

一回二回読んでては癒やしかった、でも三回はイラッと来るな。毒盛った前に僕は冴えた、でも気を失ったら眠りが引き取った。起きるのはイヤ、その声にそれを伝えないなぁ。

「———君(くん)!」

「もっ、なんなんだよ?!」

内(うち)なる自分(じぶん)は声(こえ)を上(あ)げた、その声(こえ)は思考(しこう)空間(くうかん)に響(ひび)いた。その途端目(とたんめ)を開(あ)けた。本当(ほんとう)の目(め)じゃなくて、夢(ゆめ)見(み)る目(め)を。

目覚(めざ)ました。機能(きのう)も戻(もど)った、視覚(しかく)、聴覚(ちょうかく)、臭覚(しゅうかく)、味覚(みかく)、そして触覚(しょっかく)も。僕(ぼく)はまた来(き)たんだ、その白(しろ)い空(そら)と黒(くろ)い床(ゆか)の部屋(へや)へ。

右(みぎ)と左(ひだり)にチラリしたら、今度(こんど)は違(ちが)う場所(ばしょ)にいると気(き)づいた。机(つくえ)の前(まえ)の椅子(いす)に座(すわ)って代(か)わりに、今(いま)僕(ぼく)は木(き)の下(した)に座(すわ)っている。楊柳(やなぎ)の木(き)。この木(き)はトッテモリアル見(み)える。こげ茶色(ちゃいろ)いの木皮(もくひ)、緑色(みどりいろ)いの木(こ)の葉(は)、そして赤(あか)いと黄色(きいろ)いの枯(か)れ葉(は)。

これは初(はじ)めてで白(しろ)や黒(くろ)をこの部屋(へや)に見(み)るのは。可笑(おか)しいな、なにも感(かん)じないが、風(かぜ)に吹(ふ)いたように枝(えだ)と葉(は)は揺(ゆ)られている。

膝日本(ひざにほん)があった。厚手(あつで)はない、でも全表(ぜんひょう)は白(しろ)い。調(しら)べ見(み)たら、表紙(ひょうし)だけが白(しろ)いではなく、全(すべ)ての誌面(しめん)は白(しろ)い。

「———君(くん)!」

またその声(こえ)だ。今度(こんど)はどこから来(き)たのは分(わ)かる。

な——

右(みぎ)に振(ふ)り向(む)いたら驚(おどろ)いた。白(しろ)い影(かげ)の姿(すがた)が目(め)の前(まえ)で一歩(いっぽ)くらいにいる。彼女(かのじょ)は自分(じぶん)のいない風(ふう)に吹(ふ)いた揺(ゆ)れている背中(せなか)ぐらいの長髪(ちょうはつ)が目(め)に入(はい)らないように手(て)で顔(かお)を塞(ふさ)げている。

「なんの用(よう)だ?」

先度(さきど)みたいに形(かたち)のない自分(じぶん)の声(こえ)が聞(き)こえた。声(こえ)はちょっと違(ちが)う、なんか軽(かる)く聞(き)こえた。それに、この前(まえ)と違(ちが)う、この白(しろ)い影(かげ)は今(いま)ブラウスとジーンズを着(き)る。

「ここで寝(ね)しちゃってるの?」

彼女(かのじょ)は叱(しか)った。声(こえ)が怒声(どせい)聞(き)こえたが、でも女(おんな)らしい。

「そうなら何(なん)だ?ってかお前何(まえなに)しに来(き)た?」

「お前(まえ)が返事(へんじ)したらアタシはわざわざここに来(こ)くる必要(ひつよう)ないわよ。」

彼女(かのじょ)は腕(うで)を組(く)むながら僕(ぼく)を叱(しか)った。

「言外(げんがい)だろう?返事(へんじ)しなかったら、お前(まえ)を見(み)たくないって。」

「まぁ、いい。」

彼女(かのじょ)は右(みぎ)髪(かみ)を手(て)ぐしながら、彼女(かのじょ)はあきらめた。

「エヴェが探(さが)したわよ。」

「えヴぇ?なんの用(よう)?」

「借(か)りた本(ほん)のことだって。」

「おっ、これか?待(ま)ってって伝(つた)えてくれ、まだ読(よ)み終(お)わってないし。」

「早(はや)くしろ。」

「辛(つら)いよ、いつも読(よ)めたらすぐ寝(ね)っちゃうし。」

「じゃぁ、先(さき)にエヴェを読(よ)ませて。」

「イヤッ、エヴェが読(よ)めたら一週間(いちしゅうかん)掛(か)かる。今夜(こんや)読(よ)み終(お)わらせるから、休(やす)ませてくれ。」

「アッ、ホントにここで寝(ね)たね?!」

「だからなんだ?」

「ここで寝(しん)っちゃダメって決(き)めたでしょ!」

ずっと僕(ぼく)をたち場所(ばしょ)から叱(しか)った、彼女(かのじょ)は僕(ぼく)を近(ちか)づいて右手(みぎて)を引っ張(ぱ)り始(はじ)めた。この前(まえ)アインホーンの手(て)を握手(あくしゅ)した時(とき)みたいに、彼女(かのじょ)の姿(すがた)なのに、触(さわ)りは確(たし)かだ。右手(みぎて)を取(と)りそして全力(ぜんりょく)で引(ひ)っ張(ぱ)り。どれだけ引(び)っ張(ぱ)っても、僕(ぼく)は動(うご)かない。僕(ぼく)は抗(あらが)えないのに、でも彼女(かのじょ)な全力(ぜんりょく)で引(ひ)っ張(ぱ)り続(つづ)けて。

「ここにいさせてよ、夜明(よあ)け前戻(まえもど)るからって!」

「ダメって!起(お)きろ!」

「シツッコイなぁ・・・」

「起(お)きろって!」

「・・・起(お)きろって!」

「・・・起(お)きろ・・・」

声(こえ)が遠(とお)ざかるまで、彼女(かのじょ)は僕(ぼく)の右手(みぎて)を引っ張(ぱ)り続(つづ)けた。でも声(こえ)が響(ひび)き続(つづ)けた。少(すこ)しずつ、彼女(かのじょ)の引っ張(ぱ)りは外的(がいてき)の勢(いきお)いになった。

気(き)を戻(もど)った、漸う僕(ぼく)は周(まわ)りのことに待機(たいき)する。曖昧(あいまい)にエンジン(えんじん)と警音器(けいおんき)の声(こえ)が聞(き)こえたが、でも何(なに)も見(み)えない。それで僕(ぼく)の頭(あたま)に袋(ふくろ)を付(つ)けただと思(おも)い出(だ)した。何(なに)も見(み)えないのは当(あ)たり前(まえ)だ。

それに、手(て)を動(うご)いてみたら、手(て)の動(うご)きは限(かぎ)ってる。背中(せなか)の裏(うら)に手(て)が縛(しば)った。何(なに)が縛(しば)っているのは感(かん)じた、鋼(はがね)寒(さむ)いはないから、手枷(てかせ)じゃない。太(ふと)くもないし、綱(つな)じゃない。細(ほそ)くて薄(うす)くてでも強(つよ)い、ジップタイな。

ジップタイ、細(ほそ)くても薄(うす)くても、コイツの縛(しば)りから破(やぶ)り放(はな)すのも辛(つら)いな。何度(なんど)やってみたら諦(あきら)めた、手(て)を広(ひろ)がってジップタイを伸(の)びてみたら、ジップタイは伸(の)びない、むしろてが痛(いた)くなる。

目隱(めがくれ)ししても、自分(じぶん)のことを確認(かくにん)する。ここに着(つ)いた前(まえ)に、最後(さいご)にあったは救助隊(きゅうじょたい)が僕(ぼく)の頭(あたま)に袋(ふくろ)を付(つ)けた。今(いま)僕(ぼく)はなんだかの長椅子(ながいす)に座(すわ)っている、背中(せなか)はなんだかの壁(かべ)に寄(よ)れている。

そとからのかすかな交通(こうつう)の声(こえ)からで、察(さっ)すると、今僕(いまぼく)はどこかへ救急車(きゅうきゅうしゃ)で運(はこ)ばれている。

「クッソ監督(かんとく)、返事(へんじ)が遅(おそ)い!」

「指令(しれい)仰(あお)ぐからどれくらい?」

「もはや一時間(いちじかん)だよ。」

「まぁ、遅(おそ)いするって伝(つた)えてくれ。」

もし僕(ぼく)と一緒(いっしょ)に誰(だれ)かがいたら、手(て)を広(ひろ)がってみた以外(いがい)僕(ぼく)はまだ動(うご)かない。左(ひだり)で二(ふた)つのつぶやき声(こえ)聞(き)こえたら、僕(ぼく)は正(ただ)しかった。動(どう)かったら間(ま)違(ちが)いなく襲(おそ)われるだろう。

マトメテ考(かんが)えろ!

頭(あたま)を空(そら)にして、理性的(りせいてき)な策(さく)をを考(かんが)える。何(なに)があっても、まずは自分(じぶん)を放(はな)さないと。それと早(はや)く。彼(かれ)らが僕(ぼく)を離(はな)れる時(とき)たら、ぼくは必(かなら)ず危険(きけん)な場所(ばしょ)と事情(じじょう)に着(つ)くだろう。

上(うえ)に前(まえ)まで手(て)を回転(かいてん)すれば?肩(かた)を折(お)れなければ筋(すじ)を違(ちが)えなければ無理(むり)だ。下(した)には?かも知(し)れない、でも重心(じゅうしん)を取(と)らないと、そして動(うご)きが見(み)たら、彼(かれ)らはすぐ逮捕(たいほ)するだろう。もし戦(たたか)わなければならない時(とき)が来(き)たら、目隱(めかく)してなければ楽(らく)な。

一番(いちばん)のはまたジップタイを折(お)れるまで広(ひろ)がってしかない。難(むずか)しいかも、でも彼(かれ)らが何(なに)をするかより、手首(てくび)を傷(きず)つくのもましそう。

何度(なんど)試(ため)したら無駄(むだ)だった、ジップタイは全然(ぜんぜん)伸(の)びない。それに、僕(ぼく)は楽(らく)に座(すわ)ってない。何(なに)かが感(かん)じる、尻(しり)に硬(かた)いものが気楽(きらく)に座(すわ)ってられない。

財布(さいふ)か?イヤ、持(も)ってないし。携帯(けいたい)?もっともないだ。

裏(うら)ポケット何(なに)かを入(い)れたって覚(おぼ)えはないな、でもまた思(おも)い出(だ)して見(み)た。もっと深(ふか)く思考(しこう)に掘(ほ)り込(こ)まれて、でも漁船(ぎょせん)に起(お)きたら時(とき)、ポケットに何(なに)もなかった。だからこれはその後(ご)に入(い)れた。漁船(ぎょせん)の乗員(じょういん)が入(い)れてくれたのか?イヤ、疑(うたが)わしい。

それで今(いま)まで全(すべ)てしたことを思(おも)い出(だ)してくる、目覚(めざ)めた、漁船(ぎょせん)乗員(じょういん)を出会(であ)った、乗員(じょういん)と嵐(あらし)に擦(す)り抜(ぬ)けた。。。

アッ!そうだ!

思(おも)い出(だ)した。帆(ほ)を縛(しば)った後(ご)、そこにナイフ入(い)れた。返(かえ)しもらって忘(わす)れたね、でも覚(おぼ)えてないよかった。

注意(ちゅうい)している僕(ぼく)は、ユックリと手(て)を裏(うら)ポケットに入(い)れて。両手(りょうて)を動(うご)かせるは仕方(しかた)なくて。もし僕(ぼく)が自分(じぶん)を見(み)ると、怪(あや)しいかと思(おも)うだろう。それだから僕(ぼく)は彼(かれ)らの会話(かいわ)を立(た)ち聞(き)いている、ここまでに彼(かれ)らはまだ僕(ぼく)を気(き)づかなくて話(はな)し合(あ)っている。

少(すこ)しずつナイフを引っ張(ぱ)り出(だ)す、少(すこ)しだけ動(うご)きする、彼(かれ)らの気(き)を引(ひ)かないように。引(ひ)っ張(ぱ)り出(だ)す見(み)たら、自分(じぶん)の体重(たいじゅう)が長椅子(ながいす)に嵌(はま)った。ちょっとほど力入(ちからはい)れば、ナイフとるももっと長(なが)くなる、でももっと気(き)を引(ひ)かれない。折(おり)よく、少(すこ)し引っ張(ぱ)ったらスルッと出(だ)した。

フォールディングナイフは手(て)に入(い)れた、開(あ)けるのは簡単(かんたん)だった。アレの刃先(はさき)をジップタイに掛(か)かって、少(すこ)し抑(おさ)えを入(い)れて切(き)り始(はじ)まる。

トントンっとノックの声(こえ)が聞(き)こえた。

「ほらガエル、まだか?」

「そうだよ、交通(こうつう)渋滞(じゅうたい)ひどい。」

破(やぶ)る!

ジップタイが切(き)るほど広(ひろ)がっていく、それに切(き)るほど切(き)るのももっと楽(らく)になる。

「アッ、監督(かんとく)だ。」

「で?指令(しれい)は?」

「時間(じかん)掛(か)かるなら平気(へいき)、でも早(はや)ければ早(はや)いほど良(よ)いのだ。予定(よてい)は変(か)えてくる、遅(おそ)くないでように。だって。」

監督(かんとく)?

この「監督(かんとく)」っと言(い)う人(ひと)は僕(ぼく)の逮捕(たいほ)するの監督者(かんとくしゃ)そうだ。僕(ぼく)はアインホーン以外(いがい)敵(てき)いるかしら?

「合意点(ごういてん)着(つ)いたらまた報告(ほうこく)するって伝(つた)えてくれ。」

「アァ。」

もうちょっとだけ。。。

手(て)を広(ひろ)がってみた、もっと少(すこ)し切(き)れば破(やぶ)れる。

「ほら、ヤツに調(しら)べ直(なお)したか?」

「アッ、忘(わす)れた。」

よし、破(やぶ)れた。

危機一髪(ききいっぱつ)だった、あと十秒(じゅうびょう)だけなら見(み)つかれる。彼(かれ)が頭(あたま)の袋(ふくろ)を取(と)れた途端(とたん)、僕(ぼく)はナイフの柄(え)で彼(かれ)の左(ひだり)顳顬(こめかみ)を打(う)ち投(な)げた。

彼(かれ)は時間(じかん)や反射(はんしゃ)がなかった、僕(ぼく)の攻撃(こうげき)は当(あ)たったそして彼(かれ)を背戸(せど)から遠(とお)ざかってる。

この人達(ひとたち)は戦闘(せんとう)の経験(けいけん)はなさそう、周(まわ)りのこと観測(かんそく)するチャンスをくれた。さきあたった人はリック、そしてもう一人(ひとり)はオディ。今(いま)、僕(ぼく)は救急車(きゅうきゅうしゃ)の中(なか)で囲(かこ)んでいる。可笑(おか)しいのはこの救急車(きゅうきゅうしゃ)は医療機器(いりょうきき)とか入(はい)ってない、この車(くるま)は偽装(ぎそう)だ。

「ガエル!」

オディが騒(さわ)がしたら、僕(ぼく)は動(うご)く。彼(かれ)をナイフで襲(おそ)うせずに、僕(ぼく)は踵(きびす)を上(あ)げた、オディの叫(さけ)んでいる口(くち)を蹴(け)りする。衝撃(しょうげき)は強(つよ)くて彼(かれ)を気失(きうしな)うまで壁(かべ)に突(つ)き当(あ)たった。

「オイ、何(なに)があった?」

前(まえ)から声(こえ)が聞(き)こえた、港(みなと)に僕(ぼく)を袋(ふくろ)を付(つ)けた三人目(さんにんめ)のことを覚(おぼ)えた。オディは彼のことをガエルって呼(よ)んだ。彼は冴える状態で必要。聞きたいことがいっぱいあるから。

「オディ?リック?」

何(なに)があったのか知(し)りたいなら、彼(かれ)は確実(かくじつ)にここに来(く)るはず。その前(まえ)に、この二人(ふたり)は縛(しば)ってないとな。リックのポケットにまだジップタイがありそう。それでナイフを裏(うら)ポケットに入れてそしてリックとオディをジップタイで縛(しば)って。

「オイ、大丈夫(だいじょうぶ)か?」

リックとオディのポケットに漁(あさ)っている中(なか)、表戸(おもてど)が開(あ)け閉(と)じ声(こえ)が聞(き)こえた。運転者(うんてんしゃ)が背戸(せど)にくる。ナイフとかジュンとか見(み)つからないが、リックのポケットに送信機(そうしんき)があった。そしてオディのポケットにまた送信機(そうしんき)と携帯(けいたい)があった。何(なに)もいらないが、でも携帯(けいたい)だけを取(と)った。

ガキンっと。

準備(じゅんび)をした、この二人(ふたり)がどこにも行(い)かないと確認(かくにん)した後直ぐ、背戸(せど)の取(と)っ手(て)は動(うご)かされた。好(す)きしずつ背戸(せど)は開(ひら)けている、そこから交通渋滞(こうつうじゅうたい)が覗(のぞ)き見(み)える。この救急車(きゅうきゅうしゃ)の後(うし)ろ車(くるま)の風防(ふうぼう)ガラスはこっちへ陽光(ようこう)を移(うつ)った、それで目(め)の上(うえ)半分(はんぶん)を被(かぶ)せるはならない。

fsc

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