オール・ブラック - β - 正体//Identity (前編)

振り仮名の可視を捻れる

オール・ブラック

- β -

アイデンティティー

2010(ねん)06(がつ)22(にち)

モンバサの(みさき)

10()42(ふん)

いま(ぼく)船酔(ふなよ)いを(かん)じているはず、でもない。一人(ひとり)()ごした、この寝台(しんだい)にずっと(うご)かぬまま。でもの(おも)いに(ふか)(およ)いでるから、あんまり時間(じかん)(なが)れは()らなかった。

この(ふね)のたった(ひと)つの時計(とけい)はこの保健室(ほけんしつ)にはなく、船橋(ふなばし)()った。それだから(いま)何時(いつ)()からない。(ぼく)時導(ときしるべ)はただ甲鈑(こうばん)から(なが)(うつ)朝日(あさひ)(かげ)だった。その(かげ)()えたから、もうどれくらい(とき)()ぎたが()からなくなった。

()たい(とき)(ゆめ)()ない。」

はなんかをフザケてるみたい、その鮮烈(せんれつ)単色(たんしょく)(おも)出見(でみ)せるを(ことわ)った。むしろに(あば)()()たら、(あたま)劇痛感(げきつうかん)じた。

もしたら、思考(しこう)から()してるは銃声(じゅうせい)爆音(ばくおん)、そして(さけ)びだった。(こえ)だけでも、()きなかった()かった。そのが(ひど)()こえてるではなく、だがその(こえ)自分(じぶん)が「(なに)かをしたか」っと(おも)いさせた。

はあんまり()てなかった。もししても直ぐ()きた。不安(ふあん)自分(じぶん)(やす)みから(はば)まれた、それでも(ねむ)りから(はば)まれた。もう(あさ)()ても(ぼく)(ねむ)くない。

そのがなんか視聴覚(しちょうかく)(たか)めるそう。(みみ)上甲鈑(じょうこうばん)から足音(あしおと)()こえる。上甲鈑(じょうこうばん)には(ぼく)以外(いがい)(だれ)でもいないはず。最後(さいご)()こえた(こえ)(だれ)かの足音(あしおと)上甲鈑(じょうこうばん)()がる(こえ)だった。

その足音(あしおと)はドンドン()こえてる。でもその(こえ)はそんなに(おお)きではなくて、廊下(ろうか)(なが)くないから、足音(あしおと)(ひび)かない。そのはただ(ぼく)(みみ)だけに(おお)きく()こえてる。そのは乗員(じょういん)寝室(しんしつ)()えた、(かれ)機関室(きかんしつ)()きなければなら、(かれ)(ぼく)(ところ)()く。

「セオドア?」

がるが()かっても、(ぼく)自分(じぶん)(おも)いに集中(しゅうちゅう)すぎるから、ヨルダンの突然(とつぜん)乱入(らんにゅう)(ぼく)(おどろ)かせた。昨夜(さくや)のことがあったら、(ぼく)保健室(ほけんしつ)一人(ひとり)にして、記憶(きおく)を取り(もど)()て、そして自分(じぶん)(わる)(ひと)じゃないかと()()せてする。

それに、(ぼく)上陸(じょうりく)(あと)(とき)覚悟(かくご)している。(へん)かと(おも)った、(ぼく)(こわ)くない。(ぼく)掌理(しょうり)()かっているかもしれない。でもそうしても、(ぼく)(なに)があったを()らせてる。自由(じゆう)より(こた)えを(えら)んで(わけ)ないけど、ただ()方法(ほうほう)(かんが)えない。

「ヨルダンか?」

「もう()上陸(じょうりく)(とき)だよ。」

ノロノロに(ぼく)徹夜(てつや)()らしたこの寝台(しんだい)から()()がった。(かれ)(ぼく)準備(じゅんび)するって()った。

そのことは(ほう)っておく。でも「(ぞう)無視(むし)する」って()われたような、それは出来(でき)ない。()()げて、を()べたら、(からだ)自分(じぶん)裏切(うらぎ)ってました、思考(しこう)だけが不眠(ふみん)された。

そのせい、がじ(けん)(かか)わって、でもそれを不在(ふざい)ほど、その不安(ふあん)がまたその(けん)(もど)ってしまう。そしてその、無視(むし)するのももっと(むずか)しくなる。

(いま)()く。」

()()がると医務室(いむしつ)()()めているヨルダンの(ところ)()(まえ)(ぼく)(なま)けにそう()った。(かれ)はこの部屋(へや)戸口(とぐち)()つ。この状況(じょうきょう)はなんか、処刑(しょけい)見送(みおく)刑吏(けいり)みたい。「皮肉(ひにく)な」っと(おも)った。

「なんで(ぼく)()った?」

普通(ふつう)のしゃべり(かた)ででも(すこ)大声(おおごえ)(ぼく)はそう()った。

それは昨晩(さくばん)のこと、ヨルダンはその午後(ごご)のことを(かんが)えているの(ぼく)(ちか)づいたの(とき)(だれ)もその午後(ごご)のことをよく()からないが、でもティムが(はな)した怪談話(かいだんばなし)以上(いじょう)に、(ぼく)はなんとなくその(あめ)()まったのは自分(じぶん)仕業(しわざ)だと(しん)じた。

その(とき)ヨルダンは()った、乗員(じょういん)(みな)(うそ)ついたってのこと。(かれ)らはモンバサに()げたら救助隊(きゅうじょたい)(ぼく)()っているって()ったが、でも本当(ほんとう)(ぼく)を召し()るに()くってまっている。

「だから、(みな)はキミのことを犯罪者(はんざいしゃ)だと(おも)った。」

(ぼく)はため(いき)()いた、それはないだと証明(しょうめい)できないし。

「その情報(じょうほう)(うたが)わなかった、公告(こうこく)だから。」

ヨルダンは()(つづ)いた。

()かった、それは仕方(しかた)ない。(ぼく)もそうはないの(しょう)()ってないから。」

我々(われわれ)のことを(わる)いかと(おも)わたくない、だから()った。本当(ほんとう)はキミのことを(しん)じる、(わたし)はキミが無実(むじつ)だと()かる。」

「・・・」

(ぼく)絶句(ぜっく)した。自分(じぶん)以外(いがい)信用(しんよう)()()ない、この(なに)()らない自分(じぶん)を。

「なんでそう()ってるのよ?」

正直(しょうじき)、わからん。」

(かれ)(こた)えを()くガッカリした、でもホットした。

「ただの直感(ちょっかん)かも、でも(つよ)すぎて(むし)()れない。」

「そうか。」

(なに)()らないなのに、大勢(たいせい)(ぼく)無実(むじつ)じゃないだと()ったのに、(かれ)(ぼく)(しん)じる。()()った。残念(ざんねん)(ぼく)らはたった一日(ついたち)だけ()ごした。なんかもっと(なが)()ると、仲良(なかよ)しになるかもしれない。

その(あと)(かれ)(ぼく)()(もの)(すす)めたが、でも(ぼく)(ひと)りに(えら)んだ。もし昨晩(さくばん)はどう(かん)じたかと(いま)はどう(かん)じているかと()かっていたら、それを()()ればよかった。

「これは()()りないかもしれない・・・」

ヨルダンは(ぼく)()えずにつぶやいた。

「だがゴメン。」

()こえないふりしたが、でもヨルダンは(ぼく)()こえただと()かった、でも(かれ)()らないふりした。それだから(ぼく)返事(へんじ)したくなった、でも(おそ)かった、やってみても気不味(きまず)いし。

その医務室(いむしつ)でどれだけ時間(じかん)()ぎたのが()からないが、でも(そら)はどんなに(まぶ)しいかと(わす)れるほど(なが)かった。()れる(そら)とウミネコの()(ごえ)(ぼく)とヨルダンが下甲鈑(したこうばん)から()ていたら挨拶(あいさつ)した。

()がその(まぶ)しさに()れているほど、(ぼく)(ちか)づいている(とお)いの(りく)()える。

「いつからの(はじ)めての(りく)だ。」

これは昨日(きのう)()まれたばっかりのたった(ひと)つのいいところかもしれない、(ぼく)はくだらない普通(ふつう)のものを本当(ほんとう)評価(ひょうか)()()る。

本土(ほんど)だ!」

ティムは舳先(へさき)砕波(さいは)(こえ)(たい)して悲鳴(ひめい)()げた。(かれ)(こえ)以外(いがい)(うみ)(おと)(たい)するほど(おお)きかった。

「だれかアイツが(おう)ごっこ(はじ)まった(まえ)()さえてくれ!」

ダサンは甲鈑(こうばん)からティムを(からか)った、(おな)じくらい声大(こえおお)きかった。それを()くと、甲鈑(こうばん)()ったモリーやペピーやアルヴィが(わら)った。

その()三十(さんじゅう)(ぷん)くらい、漁船(ぎょせん)はモンバサ(こう)入渠(にゅうきょ)した。入居(にゅうきょ)する(まえ)から救急車(きゅうきゅうしゃ)()っている。入渠(にゅうきょ)してもヨルダン以外(いがい)乗員(じょういん)全員(ぜんいん)(いそが)しいふりをして。ダサンとモリーとペピーは(さかな)貨物(かもつ)()()ろしふりして、ティムとアルヴィは機関室(きかんしつ)(かく)れている。

(ふね)から()りる(まえ)に、(ぼく)はもう一度(いちど)医務室(いむしつ)(もど)った。()(かえ)るつもりじゃなくて、この部屋(へや)二日(ふつか)(なに)(おも)()(つく)らない。いや、あの(あらし)(わす)れない。でもそれはこの部屋(へや)()ってないし。この医務室(いむしつ)()たのはただ()ちもの取戻(とりもどし)ってだけだった、この「セオドア・クエンティン」コートを。

甲鈑(こうばん)(のこ)ってるのはヨルダン一人(ひとり)(みな)はヨルダンに(わか)(がかり)されたそう。でも(かれ)(なに)()うかと()かってないそう。

「じゃ、(わか)れよね。」

(ぼく)無邪気(むじゃき)()った。

(みな)のことを(ゆる)してよ、(わる)いつもりないから。」

()かった。お(れい)(つた)えてくれ、あなた(たち)がいなければ(ぼく)はもうないかもしれない。」

案外(あんがい)(かれ)()()がった、握手(あくしゅ)(そな)えた。ちょっと(おどろ)いたから気不味(きまず)()けた。そう()えば、(みんな)紹介(しょうかい)(とき)ヨルダンだけが握手(あくしゅ)してなかった。(おそ)いでも()かった。

「ほら、まっているぞ。」

まだ握手(あくしゅ)しているままで(ぼく)(ほう)(たた)いたそして岸頭(がんとう)()っている(みどり)制服(せいふく)()二人(ふたり)(おとこ)()す。

その(おとこ)たちを()ると、(ぼく)はヨルダンの()(はな)してそしてコートを()る。(なに)()わずに(ぼく)甲鈑(こうばん)から(みなと)()りた。その(とき)「さようなら」()ってなかったと(おも)()した、でも()()いたらヨルダンはもう上甲鈑(じょうこうばん)(はい)った()ると遠慮(えんりょ)した。

(ぼく)はまた()()いてそして二人(ふたり)(みどり)シャーツ()(おとこ)のところへ早足(はやあし)する。(ぼく)(まち)への卵形(らんけい)敷石(しきいし)(みち)(ある)いてながら、その(おとこ)たちは(ぼく)()づいた。(かれ)らの(ところ)()(まえ)(かれ)らは(ぼく)(ちか)づいて。この人達(ひとたち)(ぼく)退治(たいじ)()たから、()をつけないと。

「セオドア・クエンティン少佐(しょうさ)ですか?」

眼鏡(がんきょう)(おとこ)()もった(こえ)()いた。

「そうです。」

(ぼく)(おも)わず(うなず)いて(こた)えた。

(わたし)らはアンタの救助隊(きゅうじょたい)です。」

(うそ)だ。

最初(さいしょ)から(うそ)ついたなんて、()()いて理由(りゆう)()えたな。

(わたし)はオディ、こっちはリック。」

()()りするのもトッテモ(つら)かった、でもこの人達(ひとたち)自分(じぶん)正体(しょうたい)()がかりだから、キャラしないと。

(くるま)はあそこで駐車(ちゅうしゃ)している、(いま)アンタを送ります。」

「あ—あぁ。」

(ぼく)(あわ)ててるのは(かれ)らが(なに)をするかを(かんが)えてるから。(さいわ)い、(かれ)らは本当(ほんとう)(ぼく)をアインホーンの(しょ)(おく)って()く。最悪(さいあく)(ぼく)をここで(ころ)す。(ぼく)本当(ほんとう)飛行機(ひこうき)墜落(ついらく)したならそうするだろう。最後(さいご)手段(しゅだん)心配(しんぱい)なぁ、でも(かれ)らは(ぼく)(うわ)(そら)を甘えてるみたい。

路地(ろじ)()たら、赤白(あかしろ)救急車(きゅうきゅうしゃ)駐車(ちゅうしゃ)した。オディとリックが(ぼく)をそこへ()れている、やはり逮捕(たいほ)するのか?

報告(ほうこく)から少佐(しょうさ)記憶喪失(きおくそうしつ)(わずら)わしいですね?」

救急車(きゅうきゅうしゃ)(ある)いてながらオディが(はな)(はじ)まった。(なに)かを()ってよかった。沈黙(ちんもく)二人(ふたり)()らない(ひと)(ある)いてって本当(ほんとう)()()かない。

「そう、せの漁船(ぎょせん)(すく)ってくれたの以上(いじょう)(おぼ)えてないです。(なに)があったのか(おし)えてくれないかな?」

正直(まさなお)(わたし)たちも()からないです、(わたし)たちはただアンタを()かいに来ただけから。」

そうかと(おも)った。(かれ)らはただの(した)()だから。

「その報告(ほうこく)からは、アンタは飛行機(ひこうき)事故(じこ)()かった。」

リックが()った。

「それは()っている、昨日(きのう)漁船(ぎょせん)乗員(じょういん)から()いた。」

「ごめんなさい、それ以上(いじょう)はわからない。」

オディが()った、そうながら、(ぼく)たちはもう救急車(きゅうきゅうしゃ)(ところ)()いた。

「それでも安心(あんしん)してください。これからアンタを()っている(ひと)(おく)ってくる。」

本当(ほんとう)?」

リックと(はな)している(ところ)に、(ぼく)はオディが救急車(きゅうきゅうしゃ)背戸(せど)()けたを()えなかった。失敗(しっぱい)した。その背戸(せど)()けた途端(とたん)三人目(さんにんめ)(あらわ)れて、(ぼく)(あたま)(ふくろ)()けた。

(なに)する——」

(ぼく)(あば)れたから、(かれ)らはもっと(ちから)()れて。(ぼく)がまだ(なに)があっているか()からない、(かれ)一人(ひとり)()(ぼく)(くち)(はな)(ころ)す。それで(きゅう)にこの(えぐ)(にお)いが(はな)()す。

「クロロホルム!」

「———(くん)。」

その(にお)いが思考(しこう)(あやつ)った、身体(からだ)(きゅう)(つか)れてく(かん)じた。その()(ぼく)(かお)から(はな)った(とき)(あたま)はもう(おも)すぎる。砂俵(すなだわら)みたいに()ちる(まえ)に、(ぼく)()こえた、(だれ)かが声出(こえだ)さずに(ぼく)名前(なまえ)()んだ(こえ)

物事(ものごと)(あか)るい(めん)()れば、これは昨日(きのう)から(はじ)めての(ねむ)りだ。

「———(くん)。」

またその(こえ)だ。名前(なまえ)()こえなかったのに、なんで(ぼく)()んでいた(かん)をするだろう?その(こえ)(やわ)らかい、毒盛(どくも)った(ぼく)(いや)する。

「———(くん)!」

「ウルサイ・・・」

一回二回読んでては癒やしかった、でも三回はイラッと来るな。毒盛った前に僕は冴えた、でも気を失ったら眠りが引き取った。起きるのはイヤ、その声にそれを伝えないなぁ。

「———(くん)!」

「もっ、なんなんだよ?!」

(うち)なる自分(じぶん)(こえ)()げた、その(こえ)思考(しこう)空間(くうかん)(ひび)いた。その途端目(とたんめ)()けた。本当(ほんとう)()じゃなくて、(ゆめ)()()を。

目覚(めざ)ました。機能(きのう)(もど)った、視覚(しかく)聴覚(ちょうかく)臭覚(しゅうかく)味覚(みかく)、そして触覚(しょっかく)も。(ぼく)はまた()たんだ、その(しろ)(そら)(くろ)(ゆか)部屋(へや)へ。

(みぎ)(ひだり)にチラリしたら、今度(こんど)(ちが)場所(ばしょ)にいると()づいた。(つくえ)(まえ)椅子(いす)(すわ)って()わりに、(いま)(ぼく)()(した)(すわ)っている。楊柳(やなぎ)()。この()はトッテモリアル()える。こげ茶色(ちゃいろ)いの木皮(もくひ)緑色(みどりいろ)いの()()、そして(あか)いと黄色(きいろ)いの()()

これは(はじ)めてで(しろ)(くろ)をこの部屋(へや)()るのは。可笑(おか)しいな、なにも(かん)じないが、(かぜ)()いたように(えだ)()()られている。

膝日本(ひざにほん)があった。厚手(あつで)はない、でも全表(ぜんひょう)(しろ)い。調(しら)()たら、表紙(ひょうし)だけが(しろ)いではなく、(すべ)ての誌面(しめん)(しろ)い。

「———(くん)!」

またその(こえ)だ。今度(こんど)はどこから()たのは()かる。

な——

(みぎ)()()いたら(おどろ)いた。(しろ)(かげ)姿(すがた)()(まえ)一歩(いっぽ)くらいにいる。彼女(かのじょ)自分(じぶん)のいない(ふう)()いた()れている背中(せなか)ぐらいの長髪(ちょうはつ)()(はい)らないように()(かお)(ふさ)げている。

「なんの(よう)だ?」

先度(さきど)みたいに(かたち)のない自分(じぶん)(こえ)()こえた。(こえ)はちょっと(ちが)う、なんか(かる)()こえた。それに、この(まえ)(ちが)う、この(しろ)(かげ)(いま)ブラウスとジーンズを()る。

「ここで()しちゃってるの?」

彼女(かのじょ)(しか)った。(こえ)怒声(どせい)()こえたが、でも(おんな)らしい。

「そうなら(なん)だ?ってかお前何(まえなに)しに()た?」

「お(まえ)返事(へんじ)したらアタシはわざわざここに()くる必要(ひつよう)ないわよ。」

彼女(かのじょ)(うで)()むながら(ぼく)(しか)った。

言外(げんがい)だろう?返事(へんじ)しなかったら、お(まえ)()たくないって。」

「まぁ、いい。」

彼女(かのじょ)(みぎ)(かみ)()ぐしながら、彼女(かのじょ)はあきらめた。

「エヴェが(さが)したわよ。」

「えヴぇ?なんの(よう)?」

()りた(ほん)のことだって。」

「おっ、これか?()ってって(つた)えてくれ、まだ()()わってないし。」

(はや)くしろ。」

(つら)いよ、いつも()めたらすぐ()っちゃうし。」

「じゃぁ、(さき)にエヴェを()ませて。」

「イヤッ、エヴェが()めたら一週間(いちしゅうかん)()かる。今夜(こんや)()()わらせるから、(やす)ませてくれ。」

「アッ、ホントにここで()たね?!」

「だからなんだ?」

「ここで(しん)っちゃダメって()めたでしょ!」

ずっと(ぼく)をたち場所(ばしょ)から(しか)った、彼女(かのじょ)(ぼく)(ちか)づいて右手(みぎて)を引っ()(はじ)めた。この(まえ)アインホーンの()握手(あくしゅ)した(とき)みたいに、彼女(かのじょ)姿(すがた)なのに、(さわ)りは(たし)かだ。右手(みぎて)()りそして全力(ぜんりょく)()()り。どれだけ()()っても、(ぼく)(うご)かない。(ぼく)(あらが)えないのに、でも彼女(かのじょ)全力(ぜんりょく)()()(つづ)けて。

「ここにいさせてよ、夜明(よあ)前戻(まえもど)るからって!」

「ダメって!()きろ!」

「シツッコイなぁ・・・」

()きろって!」

「・・・()きろって!」

「・・・()きろ・・・」

(こえ)(とお)ざかるまで、彼女(かのじょ)(ぼく)右手(みぎて)を引っ()(つづ)けた。でも(こえ)(ひび)(つづ)けた。(すこ)しずつ、彼女(かのじょ)の引っ()りは外的(がいてき)(いきお)いになった。

()(もど)った、漸う(ぼく)(まわ)りのことに待機(たいき)する。曖昧(あいまい)エンジン(えんじん)警音器(けいおんき)(こえ)()こえたが、でも(なに)()えない。それで(ぼく)(あたま)(ふくろ)()けただと(おも)()した。(なに)()えないのは()たり(まえ)だ。

それに、()(うご)いてみたら、()(うご)きは(かぎ)ってる。背中(せなか)(うら)()(しば)った。(なに)(しば)っているのは(かん)じた、(はがね)(さむ)いはないから、手枷(てかせ)じゃない。(ふと)くもないし、(つな)じゃない。(ほそ)くて(うす)くてでも(つよ)い、ジップタイな。

ジップタイ、(ほそ)くても(うす)くても、コイツの(しば)りから(やぶ)(はな)すのも(つら)いな。何度(なんど)やってみたら(あきら)めた、()(ひろ)がってジップタイを()びてみたら、ジップタイは()びない、むしろてが(いた)くなる。

目隱(めがくれ)ししても、自分(じぶん)のことを確認(かくにん)する。ここに()いた(まえ)に、最後(さいご)にあったは救助隊(きゅうじょたい)(ぼく)(あたま)(ふくろ)()けた。(いま)(ぼく)はなんだかの長椅子(ながいす)(すわ)っている、背中(せなか)はなんだかの(かべ)()れている。

そとからのかすかな交通(こうつう)(こえ)からで、(さっ)すると、今僕(いまぼく)はどこかへ救急車(きゅうきゅうしゃ)(はこ)ばれている。

「クッソ監督(かんとく)返事(へんじ)(おそ)い!」

指令(しれい)(あお)ぐからどれくらい?」

「もはや一時間(いちじかん)だよ。」

「まぁ、(おそ)いするって(つた)えてくれ。」

もし(ぼく)一緒(いっしょ)(だれ)かがいたら、()(ひろ)がってみた以外(いがい)(ぼく)はまだ(うご)かない。(ひだり)(ふた)つのつぶやき(こえ)()こえたら、(ぼく)(ただ)しかった。(どう)かったら()(ちが)いなく(おそ)われるだろう。

マトメテ(かんが)えろ!

(あたま)(そら)にして、理性的(りせいてき)(さく)をを(かんが)える。(なに)があっても、まずは自分(じぶん)(はな)さないと。それと(はや)く。(かれ)らが(ぼく)(はな)れる(とき)たら、ぼくは(かなら)危険(きけん)場所(ばしょ)事情(じじょう)()くだろう。

(うえ)(まえ)まで()回転(かいてん)すれば?(かた)()れなければ(すじ)(ちが)えなければ無理(むり)だ。(した)には?かも()れない、でも重心(じゅうしん)()らないと、そして(うご)きが()たら、(かれ)らはすぐ逮捕(たいほ)するだろう。もし(たたか)わなければならない(とき)()たら、目隱(めかく)してなければ(らく)な。

一番(いちばん)のはまたジップタイを()れるまで(ひろ)がってしかない。(むずか)しいかも、でも(かれ)らが(なに)をするかより、手首(てくび)(きず)つくのもましそう。

何度(なんど)(ため)したら無駄(むだ)だった、ジップタイは全然(ぜんぜん)()びない。それに、(ぼく)(らく)(すわ)ってない。(なに)かが(かん)じる、(しり)(かた)いものが気楽(きらく)(すわ)ってられない。

財布(さいふ)か?イヤ、()ってないし。携帯(けいたい)?もっともないだ。

(うら)ポケット(なに)かを()れたって(おぼ)えはないな、でもまた(おも)()して()た。もっと(ふか)思考(しこう)()()まれて、でも漁船(ぎょせん)()きたら(とき)、ポケットに(なに)もなかった。だからこれはその()()れた。漁船(ぎょせん)乗員(じょういん)()れてくれたのか?イヤ、(うたが)わしい。

それで(いま)まで(すべ)てしたことを(おも)()してくる、目覚(めざ)めた、漁船(ぎょせん)乗員(じょういん)出会(であ)った、乗員(じょういん)(あらし)()()けた。。。

アッ!そうだ!

(おも)()した。()(しば)った()、そこにナイフ()れた。(かえ)しもらって(わす)れたね、でも(おぼ)えてないよかった。

注意(ちゅうい)している(ぼく)は、ユックリと()(うら)ポケットに()れて。両手(りょうて)(うご)かせるは仕方(しかた)なくて。もし(ぼく)自分(じぶん)()ると、(あや)しいかと(おも)うだろう。それだから(ぼく)(かれ)らの会話(かいわ)()()いている、ここまでに(かれ)らはまだ(ぼく)()づかなくて(はな)()っている。

(すこ)しずつナイフを引っ()()す、(すこ)しだけ(うご)きする、(かれ)らの()()かないように。()()()()たら、自分(じぶん)体重(たいじゅう)長椅子(ながいす)(はま)った。ちょっとほど力入(ちからはい)れば、ナイフとるももっと(なが)くなる、でももっと()()かれない。(おり)よく、(すこ)し引っ()ったらスルッと()した。

フォールディングナイフは()()れた、()けるのは簡単(かんたん)だった。アレの刃先(はさき)をジップタイに()かって、(すこ)(おさ)えを()れて()(はじ)まる。

トントンっとノックの(こえ)()こえた。

「ほらガエル、まだか?」

「そうだよ、交通(こうつう)渋滞(じゅうたい)ひどい。」

(やぶ)る!

ジップタイが()るほど(ひろ)がっていく、それに()るほど()るのももっと(らく)になる。

「アッ、監督(かんとく)だ。」

「で?指令(しれい)は?」

時間(じかん)()かるなら平気(へいき)、でも(はや)ければ(はや)いほど()いのだ。予定(よてい)()えてくる、(おそ)くないでように。だって。」

監督(かんとく)

この「監督(かんとく)」っと()(ひと)(ぼく)逮捕(たいほ)するの監督者(かんとくしゃ)そうだ。(ぼく)はアインホーン以外(いがい)(てき)いるかしら?

合意点(ごういてん)()いたらまた報告(ほうこく)するって(つた)えてくれ。」

「アァ。」

もうちょっとだけ。。。

()(ひろ)がってみた、もっと(すこ)()れば(やぶ)れる。

「ほら、ヤツに調(しら)(なお)したか?」

「アッ、(わす)れた。」

よし、(やぶ)れた。

危機一髪(ききいっぱつ)だった、あと十秒(じゅうびょう)だけなら()つかれる。(かれ)(あたま)(ふくろ)()れた途端(とたん)(ぼく)はナイフの()(かれ)(ひだり)顳顬(こめかみ)()()げた。

(かれ)時間(じかん)反射(はんしゃ)がなかった、(ぼく)攻撃(こうげき)()たったそして(かれ)背戸(せど)から(とお)ざかってる。

この人達(ひとたち)戦闘(せんとう)経験(けいけん)はなさそう、(まわ)りのこと観測(かんそく)するチャンスをくれた。さきあたった人はリック、そしてもう一人(ひとり)はオディ。(いま)(ぼく)救急車(きゅうきゅうしゃ)(なか)(かこ)んでいる。可笑(おか)しいのはこの救急車(きゅうきゅうしゃ)医療機器(いりょうきき)とか(はい)ってない、この(くるま)偽装(ぎそう)だ。

「ガエル!」

オディが(さわ)がしたら、(ぼく)(うご)く。(かれ)をナイフで(おそ)うせずに、(ぼく)(きびす)()げた、オディの(さけ)んでいる(くち)()りする。衝撃(しょうげき)(つよ)くて(かれ)気失(きうしな)うまで(かべ)()()たった。

「オイ、(なに)があった?」

(まえ)から(こえ)()こえた、(みなと)(ぼく)(ふくろ)()けた三人目(さんにんめ)のことを(おぼ)えた。オディは彼のことをガエルって()んだ。彼は冴える状態で必要。聞きたいことがいっぱいあるから。

「オディ?リック?」

(なに)があったのか()りたいなら、(かれ)確実(かくじつ)にここに()るはず。その(まえ)に、この二人(ふたり)(しば)ってないとな。リックのポケットにまだジップタイがありそう。それでナイフを(うら)ポケットに入れてそしてリックとオディをジップタイで(しば)って。

「オイ、大丈夫(だいじょうぶ)か?」

リックとオディのポケットに(あさ)っている(なか)表戸(おもてど)()()(こえ)()こえた。運転者(うんてんしゃ)背戸(せど)にくる。ナイフとかジュンとか()つからないが、リックのポケットに送信機(そうしんき)があった。そしてオディのポケットにまた送信機(そうしんき)携帯(けいたい)があった。(なに)もいらないが、でも携帯(けいたい)だけを()った。

ガキンっと。

準備(じゅんび)をした、この二人(ふたり)がどこにも()かないと確認(かくにん)した後直ぐ、背戸(せど)()()(うご)かされた。()きしずつ背戸(せど)(ひら)けている、そこから交通渋滞(こうつうじゅうたい)(のぞ)()える。この救急車(きゅうきゅうしゃ)(うし)(くるま)風防(ふうぼう)ガラスはこっちへ陽光(ようこう)(うつ)った、それで()(うえ)半分(はんぶん)(かぶ)せるはならない。

fsc

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